プロローグ
家を出てから、どれくらいの時が過ぎただろう。
唄の巫女になれない私は、あの家では不要な存在になったのだ。
両親の足を引っ張るわけにはいかない。
厄介払いのためだろう。
両親は十分なお金と寝泊まりできる下宿先を用意してくれていた。
これ以上の迷惑をかけたくはなかったが、素直に従う気にもなれない。
そんな胸の奥で渦巻く鬱屈な想い。
それを吐き出す術を歌以外にはしらなかった。
「歌ってはいけない」
そんな言いつけに、せめてもの反抗をするかのように。
私の気持ちを写すように雨が降り始める。
ちょうどいい。
これなら誰にも聞こえない。
ただ歌いたかった。
それだけが私のすべてだったのに。
もう二度と歌うことはないのかもしれない。
いっそ声なんて出なければいいとさえ思う。
それでも――
歌が好き
という思いだけは捨てきれずにいた。

