いつのころからか、変わってしまった家族。
幸せだった日々に戻る方法は、ひとつだけだった。
私には、才能がなかった。
父も、母も、そのことに気が付いたのだろう。
うたうことを厳しく制限する父。
笑うこともうたうこともなくなった母。
それでも私は諦めなかった。
いつかまたあの時みたいに、一緒にうたえる日が来ると思っていたから。
いつかまたあの時みたいに、うたでみんなが笑ってくれると信じていたから。
毎日、毎日、うたい続けた。
どれだけ喉が渇いても。
どれだけ涙が浮かんできても。
どれだけ声が出なくなっても。
毎日、毎日うたい続けた。
それでもうたいたくないとは思わなかった。
『うた』は、私にとって呪いのようなものになっていた。
けれど、終わりは突然訪れた。
「あなたのうたでは……ダメね」
母は私の不甲斐なさにそう言った。
「白砥家の巫女はお前には務まらん。ここから出ていきなさい」
父は目を伏せたまま、そう言った。
……うたうのが、好きだった。
ただ、それだけだった。

