「こら~、二人でイチャつくな~」
美久がまたまた懐かしのトーンで突っ込んでくる。
「でも咲はやっと朱璃に会えたね」
「うん、卒業以来会えてなかったし……会えて良かった~~」
「私もだよ。……元気そうで良かった」
話し方も雰囲気も昔のまま。昔の姿が重なり、何かがこみ上げてくるのを感じた。
……待って、泣きそう。
そういえば……と、感傷を振り切るように口を開いた。
「そうだ! 聞いたよ、結婚するんだって?」
「へへっ、そうなんだ~」
「おめでと~~」
「ありがとう~~」
改めてぎゅっと抱きしめる。
少し照れたように笑う咲。それも昔と変わらない。
「優希くんは今日来てるの?」
「うん、もう来てるよ……あ、ほらあそこ」
咲の指差す方に、スーツ姿の男性が何人か集まっている。
その中に優希くんの姿があった。
当然ながらあの頃よりかは大人っぽくなっている。
物静かで穏やかな――咲が惚気混じりに話していた彼。
もはや私たち的には咲が語る優希くん像のほうが大きい。
「あ、ホントだ。ちょっと雰囲気変わった?」
「うーん、そうかな? でも昔よりかは大人っぽくなったかも?」
「お~、なんだ、旦那の話か~?」
「ちょっと、美久! そんなんじゃ……」
ないって。と否定しようとした咲の言葉を奪う。
「あるでしょ? もうまもなく」
「あっ……、もう~~!!」
美久と私の茶化しに、顔を真赤にしてポコポコと手を振り回す咲。
まるで高校時代のやり取りが戻ってきたようだった。
咲が慌てて話を変えてきた。
「そういえば柚木は?」
「あぁ。柚木は今日、来れないって」
予め想定していたんだろう。美久がそう即答した。
「そうなんだ……仕事なのかな?」
「うーん。最近また忙しいみたいなんだよね」
二人のやり取りが遠く聞こえてくる。
美久と咲と柚木と、四人で過ごした日々を思い出す。
「まぁ、また会えるよ」
そう、呟くことしかできなかった。
「そうだよね、また四人で会いたいなー!」
「近々会えるんじゃない? 咲の結婚式とか?」
「えーもうっ……けど、そうなるといいな」
照れ笑いを浮かべる咲。
私はわざとらしく腕時計に目を向けた。
「あれ? そろそろ開始時刻じゃない?」
「あれ、ほんとだっ。受付、片付けるからふたりとも先、行ってて」
「うん、わかった!」
「よーしっ、たべよー!」
小走りでビュッフェコーナーに向かおうとする咲を、美久が呼び止めた。
「あ、咲」
「ん? どったの?」
「あれ、忘れずにね」
そういう美久に、咲は指でOKマークを作った。
その仕草も高校の時のまま。
「おっけい。分かってる~」
「なんかあるの?」
私がそう尋ねると、二人はそっくりな意地悪な笑顔を作った。
「ん~、内緒♪」
「まぁまぁ、朱璃は気にしないで」
「???」
意味深なやり取りに首をかしげる私。
そのやり取りがどこか懐かしくて、思わず笑みがこぼれた。
「あ、いま笑ったね?」
「え?」
私の顔を覗き込むように、美久がイタズラっぽく笑う。
「何年の付き合いだと思ってるの? 今日、ほんのちょっとだけテンション低かったでしょ?」
「そうそう、私たちの目は誤魔化せないよ?」
「えぇ~、なにそれ?」
二人のそんな言葉に、タハハ、と笑ってしまう。
美久も咲も同じように笑っている。
懐かしさと想い出で溢れている、今の時間を噛みしめるように.

