エピローグ2
薄明るく照らされた山道を、一人歩く。
私たちだけの秘密の場所。
木々のざわめきを抜けると、そこには草原が広がっていた。
真ん中には大きな一本の木。
この山で、いちばん空に近いと思える場所だった。
私はいつもの定位置に座り、木の洞からカセットテープを取り出す。
いつものように片方だけのイヤホンを差し込み、この場所でしか拾えない電波の音を聴いた。
もう片方のイヤホンの先には誰もいない。
もう彼女は来ない。その事実を改めて感じる。
誰よりも私がそれを知っているのに。
私はもう片方のイヤホンをそっと手に取り、目を閉じる。
ラジオから流れる旋律に胸の奥が震える。
指先から伝わる微かな振動に、彼女と過ごした時間が蘇る。
そこには、何度も一緒に耳を澄ませた音が確かにあった。
――「これが好き」って気持ちがあればいいんじゃないかな?
ふいに、あの声がよみがえる。
その声はもう聞こえない。
けれど、不思議と今は隣にいるような気がした。
イヤホンの先から、かすかに別の息遣いが混ざった気がして――。

